観劇の感想

花組NICE WORK IF YOU CAN GET IT作品とキャストの感想

こんばんは、ヴィスタリアです。

花組「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」初日を観劇しての感想です。

ヴィスタリアの独断と偏見と偏愛に満ちたもので、作品の内容に触れています。

タイトルの意味に通じるようなネタバレはしていないつもりですが
観劇するまで知りたくない方はご注意いただければと存じます。

NICE WORK IF YOU CAN GET ITはもう一つのME AND MY GIRL

このポスターが想像させるように
は一言で表すなら笑いに満ちたハッピーかつハートウォーミングなミュージカルです。

舞台は1920年代の禁酒法時代のニューヨークですが雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」の重苦しさからは程遠い世界です。

様々な年代の上流階級の人々と下町の人々たちが交錯するドタバタやロマンスの描かれ方は「ME AND MY GIRL」に近いかもしれません。

ガーシュウィン兄弟の、CMで、街角で、宝塚歌劇でおなじみのナンバーが散りばめられたミュージカル作品で、
れいはな率いる花組生がその数々のナンバーを歌って踊ってタップを踏んで、
デュエットにときめきコミカルさにくすりと笑い、ゴージャスで華やかなシーンに大興奮です。

演出の原田諒先生は雪組「20世紀号に乗って」に続いて海外ミュージカルで充実したお仕事をされたと思います。

すみれコード的にどうかな?と思う箇所もちらちらとありましたが海外のコメディということで許容範囲なんですかね…
ヴィスタリアはやや客席で身体を固くしシティーハンターの危惧が頭をかすめました。

全編通じて過不足がなくテンポもよく、
そして間延びしない展開には松井るみさんの装置が大きな役割を果たしていると思います。

ピアノの鍵盤を連想する装置があるから幕前芝居が幕前芝居に陥らないで、
限られた舞台機構が気にならないものになっています。

また有村淳先生の衣装もすばらしく、特に娘役さんたちの色とりどりのドレスがかわいいのなんのって。

演奏は録音演奏ですが、本来は生演奏が予定されていたそうです。

小川理事長の新春インタビューでも生演奏の復活を考えているというお話がありましたが、いつか必ず指揮者の先生とオケの皆様が戻られる日を待っています。

ジミー・ウィンター/柚香光とビリー・ベンディックス/華優希

キャストたちの感想はまずはトップコンビのお2人から。

◆ジミー・ウィンター/柚香光
れいちゃんコメディの天才だと唸りました。

「CASANOVA」のコンデュルメル閣下のようにピンポイントで効かせるのも
「はいからさんが通る」の伊集院少尉ように素がおもしろいのも(少尉は原作ではときに変人として描かれており、それがうまく表現されています)、
そして「花より男子」やNWIYCGIのようにコミカルさを前面に押し出したものも絶妙で巧いです。

立ち居方、焦ったときやごまかすとき、嘘を付くときの仕草だけで笑いを誘います。

ジミーはどうしようもなく女にだらしのない、ビジネス方面もからっきしの甘やかされて育った御曹司です。

そんなジミーは日の当たる場所で育ってきた天真爛漫さが底にあるのが魅力であり、
少年のような格好をしたビリー/華優希とひょんなことから出会って恋をしてまっすぐに思うのは最高にときめきました。

奔放にふるまっているように見えて、ビリ―に夢中になりながら婚約者アイリーン/永久輝せあとの結婚からいよいよ逃れられず、困惑いっぱいの顔で固まっているのも印象的でした。

頭の中では必死でこの状況から抜け出しビリーに信じてもらうための方法を探っているであろうことが手に取るように伝わってきました。

御曹司ですからおしゃれでうんといい燕尾服、タキシード、ちょっぴり派手めのスーツを次々と着替えているのですが
れいちゃんの洗練された着こなしと華奢なスタイルが際立ちます。

スーツは上着を脱いでシャツだったりジレであったり、これもまたかっこよくて目が幸せでした。

そしてひとたび踊りだせば羽が生えたかのような軽やかさでれいちゃんのオーラが爆発するようで、
また全身から歓喜がほとばしるようで、その技術にも華やかさに目が釘付けになりました。

ああ、ずっとこの美しく眩しい人をずっと見ていたい…と夢中にさせてくれるものがあります。

歌もいままでで一番よかったと思います。

◆ビリー・ベンディックス/華優希
いつだって役を演じているのではなく役を生きていると感じさせてくれる芝居心のあるはなちゃんは最高にキュートでチャーミングでした。

登場したシーンは少年を思わせるだぼだぼのオーバーオール姿なのですが、それがたまらなくキュートなんです。

お気に入りはその衣装で2幕ラストの頬杖をついて海を眺めるときの後ろ姿です。
等身大のかわいさがそこにありました。

またいつもの娘役とは違う、ヒールのほとんどないぺたんこのワークシューズでジミー/柚香光と並んだりハプニングのようなキスシーンがあるのもかわいかったです。

ジミーを好きになってしまって戸惑っているのも、嫉妬してぷんすかしているのもかわいくてたまりません。

(嫉妬がヒートアップしていく2幕の昼食会のナンバーもパワフルでよかったです)

慣れないドレス姿で慣れない色じかけをしようと悪戦苦闘しているのも
本当にこの女の子は何も知らないんだなと微笑ましくなります。

また歌唱が「はいからさんが通る」ときよりも一層自信に満ちたものになり、声を響かせる箇所もありました。

れいちゃんのタップダンスもしっかり合わせていて研鑽されたのだと思います。

ホップステップジャンプ、の大ジャンプを見た気がします。

「はいからさんが通る」の花村紅緒もはまり役でしたが再演で、できるとわかっていたことをしてみせたとも言えるかもしれませんが、
今回は初めての役をはなちゃんならではの芝居心とかわいらしさで見せてくれました。

紅緒さんもビリーも現実には絶対いない女の子ですがはなちゃんは等身大で演じているので”いまここにいる”と実感することができます。

今作はれいはなの代表作が1つ増えたと感じました。

並びも芝居の相性もぴったりで2人がじゃれあうようにしてたりすれ違ったり、デュエットしたりしているだけで
いいトップコンビだなあと思いますし、それぞれの役も作品の雰囲気も合っていました。

フィナーレのデュエットダンスも素敵でしたし、
ドレスアップしたしビリーがぐっと大人っぽい女性に見えたのも物語のその後のようでよかったです。

たくさんの笑顔とハッピーをありがとう、と呼びかけたくなるお似合いのカップルでした。

クッキー・マクジー/瀬戸かずや、デューク/飛龍つかさ

ビリー/華優希の酒の密売の仲間たちです。

彼らのボスはブラウンベアーと呼ばれる謎の人物で、「下っ端の俺らが会えるわけはない」とは兄貴分のクッキーのセリフです。

◆クッキー・マクジー/瀬戸かずや
酒の密売の年下の仲間たち(ビリー/華優希とデューク/飛龍つかさ)をひっぱり見守るいい兄ちゃんです。

プログラムには「弁舌巧みで辛辣」と紹介されていて上流階級の人々には辛辣というか取り繕うことをしませんが、
弟分たちには頼りになる存在で人のよさが滲みます。

こんな兄貴分だったらついていきたくもなります。

言葉巧みで機転がきいて、ナンバーでもストーリーの流れでもポイントとなる大活躍ぶりです。

ジミー/柚香光とのナンバーもエストニア/鞠花ゆめとの掛け合いもたっぷり楽しませてくれました。

下町っぽい兄ちゃんはあきらさんのニンだとは思いませんが、
培った実力と芸の幅で締めるべきところは締め、男役として見せるべきところは見せ頼もしい限りです。

プログラムもそして舞台でもそれぞれ違う制服姿なのですがどちらも着こなしが美しく、
スチールは短髪具合も眉間の皺も白手袋も座り方もこれぞ!という美学が凝縮されています。

マスカレード・ホテルのときよりもさらに短いのでは?という短髪もたまりません。

舞台では制服姿の背中で佇むシーンがあり、クッキーの心情が雄弁えあると同時に最高にかっこよくて拝みました。

さらにトレンチコートにハットのお姿まで登場します。

フィナーレの燕尾服✕白手袋✕タップでガーシュウィンも最高にかっこよかったです。

◆デューク/飛龍つかさ
ようやくつかさくんの美声を聞くことができました。

「マスカレード・ホテル」「はいからさんが通る」とその機会がなく、またコミカルな役が続いていることが気になっていました。

デュークもまたコミカルではあるのですがそれだけでなく、
好きになってしまったジェニー/音くり寿にまっすぐに気持ちを伝えるピュアさと歌うま同士のナンバーがあるのです。

飾らない、飾ることさえ知らない言葉でまっすぐに思いを向けられたらそりゃあジェニーだって心を動かされるというものでしょう。

この瞬間、デューク(公爵)は彼女にとって唯一の王子様になったのでしょう。

つかさくんの歌のうまさと同時に身体能力の高さも堪能しました。
走って飛んで踊って大活躍です。

実力のあるスターさんですがコメディ寄りの役が続いていますので次は違うタイプのお役をぜひ見たいです。

アイリーン・エヴァ・グリーン/永久輝せあ、エストニア・ダルワース/鞠花ゆめ

様子のおかしい(?)美女お2人です。

◆アイリーン/永久輝せあ
男役が演じる女役で御曹司に結婚を迫るーーというとME AND MY GIRLのジャッキーを連想される方もいらっしゃるかもしれません。

アイリーンはジャッキー以上にぶっとんだ役です。

ひとこちゃんの一挙手一投足が様子がおかしくておもしろくて(最高の褒め言葉えす)、でも不自然じゃないんです。
これを笑わずに見るなんて不可能です。

そして金髪長身のゴージャスな美女で、手脚の長さ、鍛えられた上での細さにはストイックさが身体に出ていて拝んできました。
いずれのドレス姿も美しかったです。

キャラクターの濃さは男役が演じるからこその女役ではありますが、外見は”女装感”をあまり感じません。

ひとこちゃんは歌もダンスもうまくて安定感があってその世界に深く誘って酔わせてくれます。

1幕注目のナンバーの1つでもあるバスルームはアイリーンの長風呂から始まるおもしろくも凝ったもので、
宝塚の羽根扇の新たな使い方を見た思いです。

(ときどき生徒さんのバスタオル一枚の姿を宝塚歌劇でお見かけすることがありますが目のやり場に困ってしまうので安堵しつつ感心しました。)

2幕では意外な人物に寄り添う場面があり劇団史上最高の腰折と膝折も披露されています。

フィナーレも娘役としてタップを踏んでおられ華やかな美女でした。

◆エストニア・ダルワース/鞠花ゆめ
アイリーンは登場からして様子がおかしいのですが、彼女の叔母であるエストニアは途中から様子がおかしくなります。

公爵夫人であり厳格な禁酒法支持者で有り余るエネルギーを禁酒法婦人会の活動に注ぐパワフルさ、
貴族としての品と鼻持ちならなさも巧くて「こういうご婦人、本当にいそう」と思わせます。

そのエストニアが2幕でとんでもないことになるのですがこれがまたすばらしかったです。

大拍手を贈りたい圧巻の存在感であり、うまさであり、迫力の歌唱でした。

ゆめさんがおいしい役を存分においしく見せてくれました。

その他のキャストたち

◆バーソロミュー・ベリー警察署長/汝鳥伶
まさかゆうちゃんさんがこんなに歌って(踊って?)ナンバーに加わってくださるさんて…貴重なものを拝見しました。

納得させるのがかなり難しそう(無理がある?)セリフもあるのですが、それさえも押し切れる力があります。

大いに笑わせてもらいましたし、彼のこれからに幸多かれと祈ります。

◆ミリセント・ウィンター/五峰亜季
ジミー/柚香光の母で実業家でもあります。

なかなか出番がこなくて待ちかねたのですが、登場してからのインパクトたるや。
押してほしいツボを押してほしい強さで押してくれます。

説得力がきちんとあってリアリティがなくなりすぎないのがうまいと思います。

素敵なお衣装は「ハリウッド・ゴシップ」の大女優アマンダ/梨花ますみがお召しでした。

気品のある上級生だからこそ似合うものだと思います。

◆マックス・エヴァーグリーン/和海しょう
まさかのしぃちゃんが歌なしということをタカラヅカニュースで聞いてちょっとがっかりしていました。

だって「マスカレード・ホテル」でも歌なし(怒涛の台詞量でナンバーも少なかったですし)、「はいからさんが通る」でも歌なしで今度こそ!と思っていたからです。

が、そのガッカリを裏切る得難い役でしぃちゃんの芝居を買われてだったの配役だと観て納得しました。

声のよさ、滑舌のよさは耳福であり、ラストに向かっていくなかでの滑稽さが作品のよきスパイスにもなっていると思いました。

上院議員ということで威厳と貫禄がありダブルのスーツがとてもお似合いでしたし、
フィナーレで踊る黒燕尾✕白手袋はかっこよかったです。

そして次回作こそソロ歌唱が聞けることを楽しみにしています。

◆ジェニー・マルドゥーン/音くり寿
アイリーンにしてもエストニアにしても様子がおかしいキャラクターですが、ジェニーもまたちょっと変わった女の子です。

歌はもちろんのことダンスも芝居も芸達者なくりすちゃんなので
思い切ったキャラクターもなんのその。

小さな体でエネルギッシュに歌って踊って小気味よくパンチが効いています。

1920年代ですから「はいからさんが通る」環役のモダンガールとほぼ同じ時代で環の赤いツーピースもかわかったですが、
今回は黄色✕黒色のドレスがとてもお似合いでかわいかったです。

以上、初日の感想でした。

一人ひとりお名前を挙げられませんがこのチーム全員が一丸となって作り上げたすばらしいミュージカルであったことは言うまでもありません。

観劇して目の前の舞台に夢中になりつつも早くも「これはまた観たい」と思っていて、次の観劇が待ち遠しいです。

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