おはようございます。ヴィスタリアです。
歴代トップスターが語る柴田先生の思い出
スカイステージで柴田先生の1周忌に合わせて放送された「かぐわしき余韻の記憶〜演出家・柴田侑宏の美学〜」を視聴しました。
デビューまでのエピソード、名作を次々と生み出した時期の多忙さ、寺田先生の主題歌に挿入歌、稽古場の様子など、約2時間の充実の番組の中で特に印象に残ったことを書いてみます。
トップスター、元トップスターの方々が貴重なエピソードや思い出をお話されてました。
うれしかったのは退団後初めて動くみりおちゃん(明日海りお)のお話をたっぷり聞いたことです。
みりおちゃんはボブスタイルのヘアスタイルに、5分袖のシャツワンピースが爽やかで美しいお姉さんになられていました。
先生は本当に声が綺麗なんですよ。低く響く声で、張りがあるんですけれど優しくてあたたかくて。
そのお声を聞きたくて、稽古場にいらっしゃると作品に関係なくても車椅子の近くまでに行って(中略)いろいろ話していただいて、いつもほっとしていました。「ここをポイントにするといいと思う」という台詞が何行か、先生の声で再生されると、素敵な役が何倍にも膨らむんです。
そして「アルジェの男」の再演でアンリ役を演じた際のエピソードを紹介されてました。
アンリという役が初演のときより場面も増え曲も1曲増えたものに書き換えていただいたんですけれども、
その部分についてすごく先生に細かくお話しいただきながら作っていった思い出があります。アンリのセリフ自体は少なくて、「はい」がとても多いんです。
「はい」だけでいろんな思いを表現しなければいけない、したいという気持ちでいたなあと思います。
他にものぞ様(望海風斗)が「凱旋門」で一言のセリフに拘ったこと、
稽古が終わってダメ出しのための役名を呼ばれると先生に刺さるものがあったんだとうれしかったとお話しているのが印象的でした。
宝塚関連の愛読書に柴田先生の対談集「タカラジェンヌとコーヒーブレイク」があります。
先頃出版された「人間が息づく舞台を」にも一部抜粋されて収めらていますが、
稽古場での柴田先生のしつこさ、厳しさや生徒さんと一緒にやって体を張ること(走ったり、口に含んだ水を霧状に吹いたり)はこれを読んで知っていました。
今回の番組で驚いたのがちえさん(柚希礼音)が紹介されたエピソードでした。
なんと開演アナウンスの稽古を1時間もしたというのです。
開演アナウンスを教室で柴田先生対私で1時間くらい稽古してくださったんです。
「皆様ようこそ宝塚大劇場にお越しくださいました」にどれだけ思いが込められるか、当たり前のように聞いてきた開演アナウンスをあんなに教わったことはないですし、
休憩の挨拶、終演後の挨拶がどれだけ大切か、こだわりに感動しました。自分の人生にとって宝物になった時間です。
観客としても開演アナウンスは大切ですしアナウンスから作品は始まると思うことがあります。
(それを非常にうまく使っているのが上田久美子先生で、「BADDY」は作品の重要な一部になっていますし、
「神々の土地」はまあ様(朝夏まなと)の声のトーンに一気に作品世界へと誘われました。)
ヴィスタリアの永遠の贔屓ヤンさん(安寿ミラ)も柴田先生の思い出をお話していました。
ヤンさんの退団公演は「哀しみのコルドバ」の再演でした。
退団公演がオリジナルの当て書きでないのは珍しいことかもしれませんが、初めてこの作品が選ばれた経緯を知りました。
最後は自分で「柴田先生にお願いしたい」ということをプロデューサーにお話して、柴田先生が「話がしたい」と、お会いしたんですね。
「自分はもう新作は書けない、時間もないし、再演でもいいか」と言われたので大丈夫ですよと。
私にはやっぱり悲劇の方がいいのかなと、「コルドバでお願いします」と…ちょうど(相手役の森奈)みはるもやめる公演でしたし、2人が悲劇に向かっていく終わり方でもいいんじゃないかなと。
柴田作品の根幹を成す美しいセリフ、言葉たち
スターさんたちが口を揃えていたのが柴田先生の書く台詞の美しさです。
(安寿) 男性女性、主役にかかわず魅力的な人物が多いし、一言の台詞にセンスがあってどの作品を見てもこの台詞を言ってみたいと思わせる力があります。
(中略)
セリフが素敵だなといつも思いますね。本読みのときに今度はどんな素敵な台詞を聞けるんだろうというワクワク感が毎回ありました。
(紫苑)台詞の一つひとつが胸がキュンとなる。
品性があって、色っぽくて美しい。
本当に柴田先生の作品は宝塚そのもの。
(杜)多くを語らないこと…かな。すごく大切な言葉を本当に選んで発することを主演をしているときは特に思いました。
(中略)
さよなら公演の「忠臣蔵」は何か言いたいと、心境と数行書いて渡したら「わかった」と言って、次の日に「これでどうだ」と一枚の紙を見せて「もはやこれで思い残すことはござらん」と書いてあったんです。
「忠臣蔵」のあの名台詞が生まれた背景にはこんなエピソードがあったんですね。
簡潔にして万感の思いが込められたこれ以上ない名台詞です。
(柚希)台詞回しがかっこよすぎて(中略)上級生もきゃあきゃあ言うくらい素敵な台詞なんですよ。
そんな台詞を思いつかないというくらい独特で、宝塚の男役が言ったときに気障になれるというのを計算して作ってくださっているので、めちゃかっこいい。
(中略)
(退団公演「黒豹の如く」について)柴田先生が自分にとってとてもハードルの高い、言うのが恥ずかしいようなセリフだらけで、男役もずいぶん学んでリラックスして舞台に立てるようにようやくなってきたころなのに、
「こいつめ!」とか、わざとらしくならず、笑っちゃうようにならず、どう言えばいいんだろうというくらい気障に作ってくださった。
この「こいつめ!」の舞台映像がスワイプで流れましたが、たしかに相当レベルの高い男役芸を要する4文字であることが伝わってきました。
柴田作品を受け継いでいくスターたち
シメさん(紫苑ゆう)の言葉には、柴田先生の宝塚への愛、シメさんの愛いっぱいでした。
私たちの世代は(先生の目について)両方知っているので…見えていらっしゃった頃、どんどん見えなくなっていた頃、全然見えなくなった頃と、自分たちは切ない思いで見てきて、
舞台稽古に行ったらいつでもいらっしゃるんです。見えていないのに。どの舞台稽古に行ってもいらっしゃる。すべての宝塚をご覧になって心配され愛していらっしゃることが胸に迫ります。
(中略)
私は音楽学校で柴田先生のあらゆる作品を本科生に残していっていますし、これからも「これが柴田先生の作品なんだよ」と、柴田先生の作品が宝塚で生き続けていただけるよう自分がやっていきたいと思っています。
ヤンさんも振付家としての言葉がありました。
そちらの世界になつめさん(大浦みずき)もいらっしゃるし、公平さんも小原先生も寺田先生も、皆さんいらしてすごく賑やかなんじゃないかなと思います。
でもこっちは寂しいです。先生が書かれた名作がずっと残っていけるよう、私たちがそれを伝えていかなくちゃいけないと思っていますし、自分の体が動くうちは振付をがんばって柴田先生の作品のすばらしさを後輩たちに伝えていけるようにがんばりますので見守っていてください。
この言葉にはウルウルきてしまいました。
柴田先生、今ごろ冥土歌劇団でコーヒーブレイクしたりダメ出しされているでしょうか。
音楽学校でシメさんが教え、再演作品をヤンさんが振付け、星組全国ツアー「アルジェの男」では峰さを理さんもスタッフとして参加され、
柴田先生を直接知っているOGさんが伝えていってくれることがファンとしてうれしいです。
柴田作品の娘役は愚かなのか?
柴田作品の魅力の一つは娘役の役が魅力的かつ役が多いことにあると思っています。
ヅカ友さんが「柴田作品は女性が愚かなのであまり好きではない」と話していてそういう感じ方もあるのね…と思ったことがあります。
たしかにそう思う作品もありますが(たとえば「凱旋門」のジョアンなど)作品の時代背景を考えたときに、愚かな女性というよりそうするしかない人の生き方の悲しさを感じます。
柴田先生は男役を魅力的に見せる、立てるには娘役が重要であることを誰よりもわかっておられたことを作品を見ると伝わってきますが、
たとえ愚かに見えることがあったもしても彼女たちは決して男(役)に都合のよい存在で終わっていないと思うのです。
今回番組の中で柴田先生のインタビュー映像が流れました。
主役が何をやるかというところから作品が始まりますから男役を第一に押し出していくんですけれども、
娘役に魅力がないと男役も立ちませんし作品自体も面白くないので、娘役に力を入れるのは当然のことなんです。次に控えている人たちの中でも、娘役に十分働いてもらうというような配慮をしていくと逆に男役が豊かに見えて、主役もヒロインがいい役であると男役もかっこよく見える。
みりおちゃんがこんなことを言っていました。
特に好きなのが女性の描かれ方です。
主なのはヒロインですけれども2番手さん、3番手さん、出てくる女性が可憐だったりかっこいい女性だったり、先生の頭の中から紡がれた世界が1時間何分の間にあんなに広がるんだ、こんなに人の心を掻き立てるものが詰まっていて、本当に好きだなあと思います。
まさにトップ娘役のヒロインだけでなく女役、娘役2番手にもドラマがあり幅があることが大きな魅力になっていると、「仮面のロマネスク」や「あかねさす紫の花」を見て思うのでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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