観劇の感想

宙組「黒い瞳」恋愛と男の友情を両立させるもの(ライブビューイング感想)

こんにちは、ヴィスタリアです。

宙組博多座「黒い瞳/VIVA!FESTA! in HAKATA」のライブビューイングに行ってきました。

ヴィスタリアの独断と偏見、偏愛に満ちた感想です。

なお月組初演は当時リカさん(紫吹淳)が好きだったこともありビデオテープが擦り切れるほど見て、今回もオンデマンドで見直しました。
雪組再演は未見です。

「黒い瞳」は恋と愛と男同士の友情を描き切った名作

原作ありのものにせよ完全オリジナルにせよ柴田先生の作品が別箱、全国ツアーで何度も再演されているのは作品の質、完成度が高いことにあるのは言うまでもないでしょう。

そして数ある柴田作品のなかで「黒い瞳」は恋愛と男同士の友情が両立しているという点で一線を画しているのではないでしょうか。

トップスター、トップ娘役、2番手の三者の関係が恋愛だけに終始せず、ふしぎな縁で惹かれあった男同士の関係に広がり、どちらも邪魔をしていないこと、ヒロインの出生の秘密が絡んで展開し歴史のドラマと重なっていくという奥行きもまた「黒い瞳」の完成度の高さになっているとヴィスタリアは思います。

この両立に欠かせないのがマーシャというただかわいくて守られるだけではない、行動的なヒロインではないでしょうか。

作品の後半でマーシャは愛するニコライを救うために長旅をし、女帝陛下に謁見して嘆願します。
ニコライを助けるためならどんなことでもやるという強い信念を持ち、実際に行動しているわけです。

このマーシャの旅の踊り、エカテリーナ2世との場面は見せ場の一つだと思うのですが、これがあるからこそ作品のもう1つの軸をニコライとプガチョフの関係に置くことができるのではないかと今回ライブビューイングを見て思いました。

しかもこの場面はエカテリーナ2世という娘役(女役)の見せ場を作り出すことにもなっています。

謝先生の振付、舞台機構を駆使した転換、そして狂言回しのトリオの八面六臂の大活躍も大きな魅力となっていることはあらためて触れるまでもないでしょう。
3人が体の動きで馬車を表現するところ、狂言回しから査問委員に早変わりするところは脱帽です。

ニコライ・アンドレーイチ・グリニョフ/真風涼帆

ゆりかちゃんはまっすぐな好青年ニコライを好演していました。
こういうゆりかちゃんが見たかった、と登場したところから思いました。

ニコライは両親やサヴェーリィチに大切にされて大らかに、自由に育ったであろうことがベロゴールスク赴任を愚痴る素直な口調から伝わってくるようでした。

マーシャへの恋の表し方もわかりやすいほどまっすぐで、シヴァーブリンと決闘になってしまうほど感情の激しさを秘めた人物だと思いました。
だからこそプガチョフの最期を見届けるために危険のともなう追討作戦へ参加するのでしょう。

ニコライはプガチョフとはまた違う芯のある、一本気な青年であることが伝わってきました。

ゆりかちゃんの軍服姿がとってもかっこよかったです。

普段着(という言い方でいいのか?)のロシアの軍服ももちろんのこと、なんといってもエカテリーナ2世に謁見するときの白い軍服姿のなんとかっこいいことか。
脚が長すぎて?!となりました。

また櫛目をきっちりつけた乱れのないヘアスタイルもとってもお似合いですてきでした。

マリア・イヴァーノブナ(マーシャ)/星風まどか

なんてかわいい、愛らしいお嬢さんなんでしょう。
ゆりかちゃんと同じく「こんなまどかちゃんが見たかった」と思いました。

マーシャはかわいいだけのお嬢さんではなく、自分の出生のことで悩み苦しみ、また愛する男を救うためにどんなことでもする強さを秘めています。

ニコライを救うためにシンビールスクからペテルブルグまで旅をし、女帝エカテリーナ2世に謁見し自らの出自のことを打ち明けるなんて相当の勇気と覚悟がなければできないことでしょう。

(シンビールスクの場所を調べようとしたら都市名が変わっているのが見つけられませんでした。)

まどかちゃんのマーシャはそういった秘めた強さがありました。

歌はもちろんのこと、雪の妖精のダンス、ニコライを救うためにペテルブルグに向かうところのダンスも軽やかですてきでした。
(後者は振付が変わっていると思うのですが難しそうでしたし、トリオにリフトされて捌けるのが新鮮でした。)

どの衣裳もヘアスタイルもかわいかったですが雪の妖精とピンクの野苺のようなドレスが特にまどかちゃんの可憐さに似合っていたと思いました。

あと爪を少し長くして淡いベージュ系の色に塗っておいでだったと思うのですが、これがお嬢様らしくていいなあと思いました。
劇場で見たら照明を浴びて指が長く美しく見えそうです。

プガチョフ/愛月ひかる

なんとしても「黒い瞳」のライブビューイングを見なくては、と思ったのは演目もさることながら、宙組生としての愛ちゃんの最後の舞台を見ないわけにはいかないと思ったからです。

それもプガチョフという大きな役を愛ちゃんがするのですから見ないわけにはいきません。

プガチョフは恋愛要素が一切なく、髭で浮浪者のような恰好で登場して、スターさんがやる役では珍しい役ではないでしょうか。
しかし人間的な大きさやふしぎな魅力などのある、やりがいのある役、おいしい役だと思います。

月組初演時にリカさん(紫吹淳)が好きだったヴィスタリアにとってプガチョフは特別な役で、リカさんのあのセリフ、この表情、仕草が目に焼き付いています。

リカさんと比べるわけではなく愛ちゃんがプガチョフをどのように作り上げるのかを楽しみにしていました。

愛ちゃんのプガチョフはゆりかちゃんと渡り合って歌ってよし、踊ってよし、芝居もよしで、大きな存在感を感じました。

愛ちゃんのプガチョフは器の大きなリーダー、自分の正義を貫く気持ちのよい男でした。

マーシャを助け出した後のニコライへのセリフなどから、プガチョフには彼なりの正義、信念があって、助けると決めたら助ける、一度決めたことは翻さないという、一本気な太い芯のある人物だと感じました。

ニコライに恩義を感じていてお礼をするところ、シヴァーブリンに激怒するところなど、プガチョフという人物の男気が伝わってきました。
一度信頼した人間を彼から裏切ることはないのではないか…と想像したくなりました。

一方で愛ちゃんの男くさくもすっきりとした容貌や眼の光に、大軍を率いて統率できる頭の良さ、感情だけに流されない切れ者の雰囲気があると感じました。

プガチョフがやがて辿りつくところを思うと、ニコライとの歌ですでに泣けてきて、最後の場面も泣けて仕方なかったです。

また愛ちゃんの顎ヒゲのこだわりっぷりが最高にツボでした。
このきれいに刈り込んだタイプの髭、男役さんでどなたかやってほしい、見てみたいと思っていたんです。

プログラムのお稽古着からしてすっかりプガチョフで、愛ちゃんのこういうこだわりを見るのも楽しいです。

シヴァーブリン/桜木みなと

甘い雰囲気と王子様のようなルックスのずんちゃんには白い役のイメージを抱いているのですが、性根のひねくれ曲がった姑息なシヴァーブリンを好演していたと思います。

なにをたくらむ顔、片頬をゆがめた意地の悪い笑み、ややだらしのない立ち方など、シヴァーブリンの狡さやろくでなしの雰囲気が出ていたと思います。

ヴィスタリアのお気に入りはシヴァーブリンがテーブルの上に長い脚を投げ出してふんぞり返っているところです。

宝塚で2枚目のスターさんがやるには珍しいように思いますしシヴァーブリンは嫌な男ですが、かっこいいです。
かっこよく見えるよう、すごく研究されているのではないでしょうか。

トリオ(愛)/和希そら

そらくんは歌もダンスも上手く、見ごたえがありました。

一箇所、後ろ向きにジャンプするバレエ的な振付があったと思うのですが(違ったらすみません)、床を離れてからの滞空時間があまりにも長くてそらくんは空を飛べることを知りました。
そのくらい見事な跳躍でした。

ただうまいだけでなく、そらくんは見せ方がうまい、静止したときのポーズなどが美しいことにも気づきました。

ショーの黒燕尾で腕をすっと上げたときのポーズも決まっていました。

高身長揃いの宙組の男役さんのなかでそらくんは小柄に見えることもあり、芝居・ダンス・歌と類まれな実力もあり、別の場所(組)でより一層の輝く道もあるのではないかしら、と思いました。

エカテリーナ2世/純矢ちとせ

幕開きの華やかな宮廷と苦しむ民衆たちの対比のところで「なにを言っているのかわからないわ」とでもいうような、民衆やコサックたちの苦しみが思いも至らない表情をしていたところから、ヴィスタリアはせーこさんのエカテリーナ2世にひれ伏したくなりました。

せーこさんの娘役力の高さに感服するのは、ただ美しいだけでなく「異人たちのルネサンス」のクラリーチェ役はこの時代の絵画に描かれるような美女に見え、今回は18世紀後半のロシアの美貌の女帝に見えるところです。

クラリーチェも底冷えのするような女の恐ろしさに震え上がりましたが、エカテリーナ2世は権力を握っている分強さがあったと思います。

プガチョフ討伐作戦を言い渡すところの迫力は背筋が凍るほどの恐ろしさで、「私の宮廷」というセリフに震撼しました(褒めてます)。

プガチョフとにらみ合うところが名シーンだと思っているのですが、ビシビシと目と目で対決するせーこさんと愛ちゃんにシビれました。

せーこさんの美貌は輝やくばかりでした。
贅を凝らしたドレス、プラチナブロンドの鬘、アクセサリーなどなんと美しくまたお似合いなんでしょう。

特にマーシャとの場面で白い総レースの手袋でマーシャのあごに触れるのは視覚的にとても印象に残りました。
デコルテを繊細な白いレースが覆うのもすてきでした。

「宝塚GRAPH」あたりで各ドレス、アクセサリーなどの写真を紹介していただきたいくらいです。

ベロボロードフ/澄輝さやと

あっきーさん、かっこよかったです。
髭をつけてもあっきーさんの冴え冴えとした美しさは輝いていました。

コサックのダンスでも動きがきれいで目が吸い寄せられると思ったらあっきーさん、ということが多かったです。

ヴィスタリアの母サラ(ライトなヅカファン)は「ときめきの原点」でせーこさんとあっきーさんがお話するのを見てからどうやらあっきーさんがお気に入りのようです。

先日母と星組観劇に行った際にキャトルで買い物をしているところ初めて見たのですが、何を買ったのかを聞くと「澄輝さんの舞台写真。きれいよねえ」とうれしそうにしていました。

サヴェーリィチ/寿つかさ

悲劇より喜劇の方が難しいと思います。芸達者な組長さんは大きな支えでしょう。

ペテルブルグでレーヴィン夫人に鼻の下を長くしてついていくところなど絶妙でした。

「黒い瞳」はまた何年かしたら再演してほしい、また見たい作品だと思いました。

5000字超の長文になってしまいました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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